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棚から1冊~『エンデュアラアンス号漂流』 2011/12/05

Posted by Master in From my bookshelf..
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『エンデュアラアンス号漂流』
アルフレッド・ランシング 著
山本光伸 訳
新潮社

「求む男子。至難の旅。僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証なし。成功の暁には名誉と賞賛を得る。」
ロンドンの新聞に載ったこの求人広告に五千名を超える志願者があったとか。
これは南極探検隊員の募集広告で、広告主は探検隊を率いることとなるアーネスト・シャクルトン。
彼はある意味命知らずの志願者の中から、船員、学者、料理人、船大工、医師、写真家など26名を選び出し、1914年当時誰ひとりとして成し得なかった、南極大陸横断探検へ意気揚々と出帆しました。

28名の男達(うち一人は密航者)が乗り組んだ船の名はエンデュアランス(「不屈の精神」の意)号。
荒海にも負けない、頼りになる船だったはずのエンデュアランス号はしかし、南極海を覆い尽くす流氷に閉じ込められ、じわじわと押し寄せる流氷群の圧力に破壊され難破、シャクルトン以下の乗組員は氷海の真っ只中に孤立してしまいます。
極地の気温はマイナス20℃を下回り、雪と氷の上を吹き荒ぶ風は風速30メートルを超えることもしばしば。
救助を求める無線機も無く、通りかかる船も無い、無人の海が広がる状況で、果たして彼らの運命はどうなってしまうのか?

結末を言うと、彼らはおよそ18ヶ月にわたって南極海をさまよった末、なんと全員が生還を果たすのです!
物語は彼らが直面する厳しい環境と、それに立ち向かう姿が、乗組員たちが書き綴った日記と、著者自らによるインタビューを基に、生々しくも感動的なドキュメンタリーとしてまとめられています。

本文中で最も印象に残ったのは、
(海との闘いは)逃げ道はどこにもない。それは疲れを知らない敵との闘いであり、人間は決してこれに勝利することはない。人間に望めるのは、ただ、打ち負かされないことだけだ。(抜粋)
という部分でした。
押し寄せる氷、波、風。
無尽蔵に等しいエネルギーで容赦無く立ちはだかる海には、確かに例え全人類が闘いを挑んでも、到底勝利することはできないでしょう。
しかし彼らは闘いを諦めなかった。
無力さに泣き、仲間に甘え、やり場のない怒りに声を荒げもした。
だけど、彼らが乗り組んだ船の名のように不屈の精神を以て臨み、船を失い目的も達成できなかったけれど、男達は負けなかった!
厳しい自然に身を置いた写真家の故・星野道夫氏が愛読したというのも、読後おおいに頷けます。

もうひと月半もすれば、知床に流氷接岸の声が聞かれることと思います。
神秘とロマンだけではない、猛り狂う制御不能の恐ろしさを持つのもまた海である、そんなことを考えつつニュースを見ることになりそうです。

私的評価=★★★★

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