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棚から1冊~『ティモレオン』 2012/11/02

Posted by Master in From my bookshelf..
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『ティモレオン』 Timoleon Vieta Come Home
ダン・ローズ 著
金原瑞人、石田文子 訳
中央公論新社

イタリアのとある小さな町。
初老のゲイの音楽家に飼われて安穏な生活を送っていた雑種犬・ティモレオン。
ある日突然現れて音楽家と同居を始めた、犬嫌いのボスニア人の男によってティモレオンは家から離れた街角に捨てられてしまう。
新しい同居人の機嫌を損ねたくないばかりに、可愛がっていた犬を置き去りにしてしまった自責の念に苛まれる音楽家。
一方のボスニア人はそんな彼の嘆きを嘲笑い、自分本意な思惑のためだけに音楽家を利用しようとします。
そして独りぼっちになったティモレオンは、懐かしの我が家を目指して見知らぬ街々を、さまざまな人たちの人生に触れながらひた走ります。
果たしてティモレオンは音楽家の元へ帰り着くことができるのでしょうか?

という骨格のお話なのですが、小説の中身の比重はティモレオンが触れる、道中で出会う人たちのエピソードです。
先述の粗筋から想像されるような、お涙頂戴的な感動の物語に終始するわけではありません。
ローマに住む恋人を訪ねてきた少女、聾唖の少女と札付きの不良少年との恋物語、ヨーロッパ人大学教授と中国人女性の結婚生活、生まれつきの発達障害を持った少女とその父親の秘話…。
劇中の挿話というよりは、それ自体が充分に鑑賞に堪える出来のエピソードの合間を縫うように、ティモレオンの足取りと音楽家の生活、ボスニア人の隠された生き様が描かれていきます。
本書の中間部は時として犬の苦難よりも、各エピソードの行方の方が気になってしまうほど。
しかもそれがどれも、決してハッピーエンドにはならない残酷さを秘めているのです。

肝心のティモレオンはというと、けなげにも家路を辿り続け、一方の読者は読み進むうちに湧き上がる「嫌な予感」を拭いきれないまま、天を仰ぎたくなるようなエンディングを迎えます。
ネタバレは避けますが、なんともやりきれない救い難い結末は、読み手によっては相当に衝撃的であるかもしれません。
「少女の瞳のように愛らしい目をした」と表現される雑種犬ティモレオンが重要な役どころで、動物小説の側面も持っていることは確かですが、犬好き・愛犬家の方たちには決して手放しでお勧めできる作品ではありません。
作中にはきわどくグロテスクな言い回しも登場して、不快感と紙一重でもありますが、個人的には忘れ難い小説になったことは確かです。

私的評価=★★★☆

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コメント»

1. フォレ - 2012/11/03

こんばんは~~
翻訳家さんの腕にかかってますな!!

読みやすかったですか?^^

>ボスニア人の隠された生き様
気になって、眠れないーー@@

Master - 2012/11/03

>フォレさん
読みやすいっちゃあ読みやすいですけど、グロテスクな表現やきわどいセックス表現があるので、お話の展開と共に好き嫌い分かれる作品と思います。

実はボスニア人は…まぁ人それぞれ背負ってるものがあるわけですよ!ってことで(笑)。

2. cumin - 2012/11/03

その音楽家よりも、ティモレインが主人公(主犬公?w)になって、話が進んで行くのかな?
最近読んでるのは、典型的な日本のドラマみたいな物語なので
ちょっと切り替えて、こういうヨーロッパの話も読んでみたいです☆

Master - 2012/11/03

>cuminちゃん
ティモレオンはただひたすら家を目指すのみで、ティモレオンはこう思ったとか、ティモレオンが何かを成し遂げたとか擬人化されることはありません。
複数のエピソードの端々をティモレオンが通り過ぎて行く、というような扱い。もちろん重要な役割なんだけど、あえて主人公を挙げるなら初老の音楽家かな。

日本人には描けない世界観だと思う。


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