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棚から1冊~『ダライ・ラマ自伝』 2013/03/17

Posted by Master in From my bookshelf..
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『ダライ・ラマ自伝』 The Dalai Lama: Freedom In Exile
ダライ・ラマ 著
山際素男 訳
文藝春秋

「ダライ・ラマ」というのはチベット仏教において観音菩薩の化身とされる、僧としての最高位を表す称号です。
また宗教上の指導者であるばかりではなく、チベットにおいては政治的な指導者でもあるという立場でもあります。
本書は現職の第14世ダライ・ラマにしてチベット亡命政府ガンデンポタンの長、テンジン・ギャツォの半世紀。

チベット北部の小さな農家に生まれた子供が第13世ダライ・ラマの生まれ変わり(転生者)として「発見」され、僧としての修行や指導者としての研鑽を積み、若くしてチベットを代表する最高指導者になるまでが序盤で語られます。
中盤では1950年代、中国の人民解放軍の侵攻によるチベット制圧(破壊、虐殺、暴力、人権蹂躙、略奪)とその後の動乱、わずかな側近を率いてインドへと亡命しチベット臨時政府(後の亡命政府)の発足、中国や近隣諸国との関係や、日常生活について綴られています。
そして終盤はダライ・ラマとしての宗教観や政治観、チベット民族だけではなく世界的な平和への願いなどが、平易な言葉でまとめられており、彼の人となりに触れることができます。

チベットやダライ・ラマに関してたいした知識もないままに読み始めましたが、読了してみると自伝の体裁をとりながらもチベット民族が歩んだ苦難のドキュメンタリーでもあり、多少なりともその歴史を学べたように思いました。
正直言ってもっと抹香臭い内容なのかとも思っていたし、説教じみた文章が並んでいるのかとも思っていました。
ところがさにあらず、いたって生活感に溢れた人間味のある描写で、退屈することなく読み進むことができました。
中国の横暴な所業についても悲嘆や静かな怒りこそあれ、決して報復や恨みつらみにつなげない、仏法に則った平和的なスタンスを貫く姿勢に感動をおぼえます。

2008年3月の大規模動乱から5年、中国の施策に対しての抗議のチベット人焼身自殺は今もなお続いており、痛ましいと同時に大国の傲慢で残虐な横暴に許し難い気持ちになります。
日本は対中外交上チベットの亡命政府を行政機関とは認めていません。
それでもダライ・ラマは一昨年の東日本大震災の折には慰霊法要のために二度の来日をしました。
自分は仏教徒ではありませんが、日本人としてその心遣いに感謝したい。
ともあれ本書はダライ・ラマのポジティブな、今できること・しなければいけないことを見極めて実行する、という姿勢を読者に説いてくれる、宗教や政治を超えた大切な心構えに気付かせてくれる好著です。

私的評価=★★★★

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コメント»

1. ayappesce - 2013/03/18

チベットの人々は本当に気の毒です。気の毒です。どうしたらいいのかわかりませんが、大国の体制が崩壊するしか手だてがないのでしょうか。

Master - 2013/03/19

>ayaさん
どんなに立派な理想を掲げていても、そこに至るまでの手段が力に任せた暴力であるのは許せない。
近年のダライ・ラマは「チベットが中国の一部であることは認めよう。しかし、チベットの文化的歴史的な存在を理解して自治を認めよ」というスタンスのようです。
中国は取り合いませんが…。


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